福島正則～秀吉の子飼い、武勇に長ける荒武者だが地元では英雄扱いされ行政面でも功績を残す。

徳川家臣

福島正則～秀吉の子飼い、武勇に長ける荒武者だが地元では英雄扱いされ行政面でも功績を残す。

徳川家臣
石田三成, 名槍「日本号」, 関ヶ原の戦い, 加藤清正, 大坂の陣, 豊臣秀頼, 秀吉の子飼い, 寧々（おね）, 酒豪, 石田三成襲撃事件, 文禄の役
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投稿者: 宇野薫子

【福島正則】

福島正則（ふくしままさのり）は、
安土桃山時代から江戸時代前期に
かけての日本の武将で、大名。
賤ヶ岳の七本槍、七将の一人としても
知られています。
安芸国広島藩主、
後に信濃高井田藩の初代藩主となります。

【生涯】
【秀吉の子飼いとして】
永禄４年（１５６１年）、市松（幼名）は
尾張国海東郡二ツ寺村
（現・愛知県あま市二ツ寺屋敷）で
桶屋を営む福島正信（正光）の
長男として生まれたということです。
けれども父・正信は
義父であったともいわれています。
その場合、実父と目されているのは、
同国春日井郡の清洲村界隈
（旧・愛知県西春日井郡清洲町、
現在の清須市の中核地域）の桶大工、および、
星野成政とのことです。
母は、秀吉（のちの豊臣秀吉）の
母（のちの大政所）の妹
（秀吉の叔母）にあたる人物であるとのことです。

少年に成長すると、
母を通じた縁で秀吉の小姓になります。

【初陣】
天正６年（１５７８年）、
播磨三木城の攻撃で初陣を飾ります。
始めの禄高は２００石でした。

【山崎の戦い】
天正１０年（１５８２年）、
山崎の戦いにおいて、勝龍寺城を
攻撃するなどして軍功をあげ、
３００石を加増されて５００石となりました。

【賤ヶ岳の戦い】
天正１１年（１５８３年）、
賤ヶ岳の戦いにおいて、
一番槍・一番首として
敵将・拝郷家嘉を討ち取るという
大功を立てて賞され、
賤ヶ岳の七本槍の中でも突出して
５千石を与えられました。
なお他の６人は３千石でした。

【小牧・長久手の戦い】
天正１２年（１５８４年）、
小牧・長久手の戦いでは、
父・正信とともに、
後備えとして兵３００を率いて
従軍したとのことです。
福島正則は本陣から美濃に
撤退する際に敵と戦い、
褒美として胴肩衣（襦袢）を賜ったとのことです。
（「福島家世系之図」）

【大名的領主へ】
その後、根来寺攻めや、
四国征伐にも従い、
天正１５年（１５８７年）の
九州平定の後、９月５日に
伊予国今治１１万３千余石を
与えられ、ここに福島正則は
「分国」を形成する大名的領主となりました。
小田原征伐では、織田信雄の軍として、
蜂須賀家政・細川忠興・蒲生氏郷などとともに
韮山城を攻撃、包囲しました。

【文禄・慶長の役】
文禄元年（１５９２年）からの
文禄の役では五番隊の主将として
戸田勝隆、長宗我部元親、蜂須賀家政、
生駒親正、来島通総などを率いて
京畿道の攻略にあたりました。
年末には京畿道竹山の守備につきました。

この後、福島正則はいったん日本に帰国します。
その後文禄３年（１５９４年）１月に
再び朝鮮に渡りました。
講和交渉の進展により
南部布陣が決まったため、
福島正則は巨済島の松真浦城や
場門浦城の守備、補給などの
兵站活動を担当しました。
１０月、朝鮮水軍を率いる李舜臣が
場門浦を攻撃した時には福島正則自ら
軍船に乗って指揮を執り、
敵船を焼き討ちするなどの反撃で
これを撃退したとのことです。

【秀次事件】
文禄４年（１５９５年）７月、
豊臣秀吉によって豊臣秀次が
切腹させられるという事件が起こりました。
この際、福島正則は日本におり、
福島秀次に切腹の命令を伝えています。
同年、尾張国清洲に２４万石の
所領を与えられています。

【羽柴名字・豊臣姓】
慶長３年（１５９８年）、
羽柴の名字が確認されています。
青木重吉に同じく
羽柴名字・豊臣姓を与えられ、
侍従任官によって諸大夫から
公家成したのとなります。
なお青木氏と福島氏は
羽柴氏の親戚の家であったとのことです。

【秀吉の死去と撤兵】
続く慶長の役には参加しませんでしたが、
慶長４年（１５９９年）に秀吉は
朝鮮半島に大軍勢を派遣して
大規模な軍事行動を計画しており、
その軍勢の大将として石田三成と
増田長盛とともに抜擢されていました。
けれども、慶長３年（１５９８年）８月に
秀吉が死去しますと、
この計画は実施されることなく
日本軍は大陸から撤兵したのでした。

【関ヶ原の戦い】
【石田三成襲撃事件】
福島正則は石田三成らと
朝鮮出兵を契機として
その仲が一気に険悪になります。
慶長４年（１５９９年）に前田利家が亡くなると、
朋友の加藤清正らと共に石田三成を
襲撃するなどの事件を起こしています。
この時は徳川家康に慰留され
襲撃を翻意しましたが、
その経緯から徳川家康の昵懇大名の一人となります。

【家康の養女と養子との婚姻】
また、姉の子で福島正則の養子になっていた
正之と家康の養女・満天姫との
婚姻を実現させました。
これは諸大名の私婚を禁じた
秀吉の遺命に反するものだした。

【会津征伐】
慶長５年（１６００年）の会津征伐には
６千人を率いて従軍します。

【家康への早々の味方表明】
その途中、上方で石田三成が挙兵した
旨の報を受けての小山評定では、
徳川家康の意を受けた黒田長政に
あらかじめ懐柔されていた福島正則が
石田三成挙兵に動揺する
諸大名の機先を制して、
いち早く徳川家康の味方につくことを誓約し、
反転して西上する方針が決定しました。
清洲から美濃方面に進軍し、
西軍の織田秀信が守る
岐阜城攻めでは池田輝政と先鋒を争い、
黒田長政らと共同で城を陥落させました。

【関ヶ原の戦い・本戦】
関ヶ原の戦いでは、
宇喜多秀家勢１万７千と戦闘を行いました。
宇喜多勢の前衛８千を率いた明石全登に、
福島勢は一時退却を余儀なくされましたが、
なんとか宇喜多勢の進撃を
防ぎ切ることに成功したのでした。

やがて小早川秀秋の背信を機に、
西軍の戦線は崩壊となりました。
宇喜多勢は、開戦時から戦っていたため
疲労が頂点に達し、東軍による
集中攻撃に持ち堪えられなくなり、壊滅。

【広島藩】
福島正則は西軍総大将・毛利輝元からの
大坂城接収にも奔走し、戦後、
安芸広島と備後鞆４９万８千石を得たのでした。

【江戸時代】
【善政】
慶長６年（１６０１年）３月に
芸備に入封した福島正則は、
早くも領内を巡検するとともに、
検地で石高の再算出を行っています。
家臣への知行割も事実上の給米制とし、
検地の結果を農民に公開した上で
実収に伴った年貢を徴収して
負担を少なくするなどの善政を敷き、
また領内の寺社の保護にも熱心であり、
慶長７年（１６０２年）には
厳島神社の平家納経を修復させました。

慶長７年（１６０２年）、
本姓が豊臣姓であることが確認されます。

【亀居城の築城】
慶長８年（１６０３年）、
安芸最西端の地に巨大な
亀居城の築城を開始します。
この城は毛利領最東端の
岩国城に対する城で、
さらに山陽道の交通を遮断する能力も
備えていたとのｋとおです。

【豊臣家を立てる】
慶長９年（１６０４年）以降、
江戸幕府による諸城修築の動員に
参加して忠勤に励みましたが、
豊臣家を主筋に立てることも
忘れなかったとのことです。

慶長１３年（１６０８年）、
豊臣秀頼が病を患うと、
福島正則は見舞に大坂城へ駆けつけています。

【淀殿を説得する】
慶長１６年（１６１１年）３月、
徳川家康が豊臣秀頼に対し
二条城での会見を迫った時には、
いまなお豊臣家が主筋と自負して
強硬に反対した淀殿を
加藤清正や浅野幸長とともに説得し、
秀頼の上洛を実現させました。
なお福島正則自身は病と称して
会見に同席せず、枚方から京の街道筋を
１万の軍勢で固めて変事に備えたとのことです。

【隠居の願いと大坂の陣】
この会見直後に加藤清正や浅野長政・幸長父子、
池田輝政といった朋友の豊臣恩顧大名が
相次いで死去します。
そして福島正則自身も
慶長１７年（１６１２年）に病を理由に
隠居を願い出ます。
けれどもそれも許されず、
大坂の陣では豊臣秀頼に加勢を求められても、
福島正則は拒絶し、大坂の蔵屋敷にあった
蔵米８万石の接収を黙認するに留まりました。
また、一族の福島正守・福島正鎮は
豊臣軍に加わりました。
幕府には従軍も許されず、
福島正則は冬の陣、夏の陣ともに
江戸留守居役を命じられましたが、
嫡男の福島忠勝が兵を率いて
幕府軍に加わりました。
しかし戦後、福島正則の弟である
福島高晴は豊臣家に内通したとして、
幕府より改易を命じられました。

【改易】
元和５年（１６１９年）、
徳川家康死後まもない頃、
台風による水害で破壊された
広島城の本丸・二の丸・三の丸及び
石垣等を無断修繕したことが
武家諸法度違反に問われます。
福島正則はその２ヶ月前から
届けを出していましたが、
先年にも一国一城令発布後にも
かかわらず新規に築城を行ったとして、
毛利家から報告を受けた幕府より
該当城の破却を命じられた後のことでもあり、
幕府からは正式な許可が出ていませんでした。
福島側の言い分では、
雨漏りする部分を止むを得ず
修繕しただけということです。
江戸参勤中の福島正則が謝罪し、
修繕した部分を破却するという条件で
一旦は沙汰止みになりましたが、
求められた「本丸以外の修築分を破却」
という条件に対し、福島正則は本丸の修築分のみ
破却をおこない、二の丸・三の丸の修築分は
据え置いたのでした。
これにより「破却が不十分である」
と咎められます。
また、人質として江戸に送るはずだった
忠勝の出発を遅らせたこと、
それに対して「万事親次第」と
弁明を拒否するなどしたため、
怒った将軍・徳川秀忠の上使として
牧野忠成と花房正成が
江戸芝愛宕下の福島正則の屋敷に派遣され、
安芸・備後５０万石は没収、
信濃国川中島四郡中の高井郡と
越後国魚沼郡の４万５千石（高井野藩）に
減転封の命令を受けることになったのでした。
移封後、福島正則は嫡男・忠勝に家督を譲り、
隠居し、出家して高斎と号しました。

【嫡男の死】
元和６年（１６２０年）、
忠勝が早世したため、
福島正則は２万５千石を
幕府に返上しました。

【功績と最期】
寛永元年（１６２４年）、
福島正則は高井野（長野県高山村）で死去。
享年は６４歳でした。
高井野での生活はわずか５年間でしたが
領内の総検地、用水の設置と
新田開発、治水工事などの功績を残しました。

【子孫たち】
幕府の検死役の堀田正吉が
到着する前に、家臣・津田四郎兵衛が
福島正則の遺体を火葬したため
残りの２万石も没収されました。
福島家は取り潰されましたが、
幕府は福島正則の子・福島正利に
旧領から３１１２石を与えて旗本としました。
福島正利が嗣子なく没した後は
一旦断絶しましたが、
福島忠勝の孫・正勝が家を再興し、
代々御書院番などを務めたとのことです。

【人物評・逸話】
＜地元ではヒーロー＞
出生地の現在の愛知県あま市では
英雄視されており、明治２２年（１８８９年）発足の
正則村の由来にもなっています。

菊泉禅院は正則の菩提寺です。

＜何でも武力・・・＞
幼い頃に父親の桶屋家業を継ぐために
安芸広島に入国する際に
船に地嵐と呼ばれる風が吹いたため、
「国入りの初めに地が荒れてよきものか」
として何の罪もない水主（船頭）を
斬り捨てました（「遺老物語」）。

＜武功挙げます、本音で生きます＞
関ヶ原の戦いでは第一の武功を賞されました。
しかし関ヶ原ではたびたび
それをなげうつことも辞さない言動をしています。

＜行政面でも功績挙げます＞
武断派の印象が強いですが、
慶長６年（１６０１年）の検地で
知行高４９万８千石であったのを
元和５年（１６１９年）に５１万５千石まで
増加させており、領主として行政面でも
結果を残しています。

自らはキリシタンではありませんでしたが、
一貫してキリシタン保護政策を堅持。
宗教に対しては寛容な政策を採っていました。

＜酒豪＞
大酒飲みで酒癖が悪かったとのこと。

＜酒豪対決で家宝の槍を失う＞
酒席で、黒田長政の使者として来ていた
黒田家家臣・母里友信に
酒を大杯で勧め断られました。
なお友信は家中でも有名な酒豪でしたが、
使者の役目柄断りました。
が、「飲み干せたならば好きな褒美をとらす」
とさらに勧め、そのうえ
「黒田武士は酒に弱く酔えば
何の役にも立たない」と罵倒します。
家名を貶められた母里友信は、
それならばと酒を見事に一気飲みし、
褒美に秀吉から拝領した
名槍「日本号」を所望しました。
福島正則は狼狽しましたが、
武士である以上前言を覆すことができず、
不覚にも家宝の槍を
呑み取られることになったとのことです。

＜その一言が必要でした＞
徳川家康が重病で死の床に就くと、
福島正則は駿府を訪れて見舞います。
家康は「一度安芸に帰られるがよい。
将軍家（徳川秀忠）に不服があれば、
遠慮せず、兵を挙げられるが良い」
と冷たく言い放ちました。
御前を退出した正則は
「今日までご奉公に努めて来たにも
かかわらず、あのような申されようは
情けない限りだ」と嘆き、
人目も憚らず泣きましたた。
それを聞いた家康は
「その一言を吐き出させるために、
あのように言ったのだ。」
と安心したということです。

＜千利休に感服＞
あるとき細川忠興に
「なぜ武勇もなく得体の知れない
茶人の千利休のことを慕っている」と尋ね、
その後細川忠興に誘われ
千利休の茶会に参加しました。
茶会が終わると福島正則は
「わしは今までいかなる強敵に向かっても
怯んだ事は無かったが、
利休殿と立ち向かっていると
どうも臆したように覚えた」
とすっかり千利休に感服したとのことです。