【源俊賢】
源 俊賢（みなもと の としかた）は、
平安時代中期の公卿。
醍醐源氏、西宮左大臣・源高明の三男。
官位は正二位・権大納言。
藤原公任、藤原斉信、藤原行成と並んで
一条朝の四納言と呼ばれ、
摂関政治の一角を担う能吏として知られています。
【生誕】
天徳４年（９６０年）
【死没】
万寿４年６月１３日（１０２７年７月１９日）
【別名】
一条朝の四納言
【官位】
正二位、権大納言
【主君】
冷泉天皇⇒円融天皇⇒花山天皇⇒
一条天皇⇒三条天皇⇒後一条天皇
【氏族】
醍醐源氏
【父】
源高明
【母】
藤原師輔の三女
【兄弟】
為平親王妃、忠賢、惟賢、俊賢、
明子、経房、致賢、
藤原正光室、源重信室、藤原相尹室
【妻】
正室：中納言の君（藤原忠君の娘）
【子】
成尋阿闍梨母、
顕基、隆国、隆縁、源朝任室
【生涯と経歴】
【安和の変】
冷泉朝の安和２年（９６９年）、
源俊賢が１１歳の時、
左大臣の高位にあった父である源高明が
大宰権帥に左遷され失脚する憂き目に見舞われます。
この時に、源高明の１１～１２歳くらいになる
童（子供）が大宰府について行くことを
許されたとされていますがが
（「栄花物語」より）、
年齢的に源俊賢であったと
考えられているとのことです。
その後、天禄３年（９７１年）になって
源高明は赦されましたが、
政界に復帰することはなく、
天元５年（９８２年）に没するまで
葛野に隠棲しました。
父の左遷は源俊賢に
藤原氏の勢力を痛感させ、
その後の処世術に影響を与えたと
見られています。
また、源俊賢は源高明によって
厳しく育てられ、
大学寮でも学んだらしいとのことです。
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【順調な昇進と後見役の藤原兼家】
円融朝の天延３年（９７５年）、
従五位下に叙爵し、
貞元２年（９７７年）に
侍従に任官となります。
永観２年（９８４年）、
従五位上・左兵衛権佐に
叙任されますと、寛和２年（９８６年）、
左近衛権少将と
花山朝から一条朝初頭にかけて
武官を務め順調に昇進していきます。
源俊賢・源経房兄弟の後見役に、
当時の執政である
藤原兼家がついていたと見られ、
この間の昇進に
藤原兼家の思惑・配慮を
読みとることができるといわれています。
【昇進を重ねて公卿に列する】
永延２年（９８８年）、
右少弁兼五位蔵人に転じますと、
永祚２年（９９０年）正五位下・右中弁、
正暦３年（９９２年）蔵人頭、
正暦４年（９９３年）従四位下、
正暦５年（９９４年）権左中弁と
関白・藤原道隆の執政下で
弁官を務めながら昇進を重ね、
長徳元年（９９５年）参議に任ぜられ
公卿に列しました。
【恩偶ある中関白家とは友好的に接する】
源俊賢が蔵人頭になった際、
本来は頭中将から参議に遷った
藤原公任の後任を選ぶ人事で、
既に頭弁として源扶義がいたこともあり、
通常ならば従四位上・左近衛中将であった
藤原斉信が適任であったところ、
正五位下・右中弁の源俊賢が任じられました。
これにより、頭弁が２人になっただけでなく、
五位ながら蔵人頭に任ぜられるという
異例の抜擢でした。
（朱雀朝以降は藤原師輔・藤原挙賢・
藤原顕光・藤原道兼ら藤原北家嫡流の僅少例のみ）
この背景には藤原道隆の
恩遇があったとされています。
或いは源俊賢が藤原道隆に
自己を推薦したという逸話もあります。
源俊賢はこの恩偶を忘れず、
藤原道隆の薨御や長徳の変を通じて
中関白家が没落していく中でも
同家に対して好意的に接したのでした。
【眠っていたので聞いていません（棒）】
長徳元年（９９５年）５月、
藤原道長に対する内覧宣旨が発せられます。
その一方で父である
藤原道隆の後を継げなかった
藤原伊周に同情して、
蔵人頭であった源俊賢は空眠りをして
この宣旨を聞かなかった
ふりをしたという話があります。
（「古事談」）
【花山院奉射事件】
長徳２年（９９６年）３月に
兄弟である藤原伊周・藤原隆家に対する
花山院奉射事件に伴う断罪を間近に控えて
内裏を退出した中宮・藤原定子の
二条北宮行啓に際して、
中宮大夫・平惟仲以外の上卿が
「悉く障りを申し不参」の中で、
源俊賢は敢えて扈従したとのことです
（「小右記」）。
長徳２年（９９６年）６月、
藤原定子の在所・二条北宮が
焼亡した際、源俊賢は
源頼定と同車して馳せ参じました。
（「小右記」）
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【バランス感覚に優れた立ち居振る舞い】
長徳３年（９９７年）４月の
藤原伊周・隆家兄弟に対して
恩赦・召還することの詮議において、
源俊賢は藤原実資・藤原公任・平惟仲とともに
「罪は恩詔を潤すべし。「犯八虐を免す」の文に依る。
但し召し上ぐる事に至りては、
只、勅定在り。左右、定め申し難し」
と最も温厚な意見を採ったとのことです。
（「小右記」）
一方で、長徳の変を経て
執政の座は藤原道長が掌握しますが、
源俊賢は中関白家との繋がりを
保ちながらも、
妹・源明子の夫で
義兄弟にも当たる
藤原道長への協力も
怠らないという
優れたバランス感覚を
発揮するのでした。
（１）
長徳２年（９９６年）８月、
藤原道長主催の
藤原在国大宰大弐赴任の餞において、
夕刻に行われた和歌会へ参加。
（「小右記」）
（２）
長保元年（９９９年）２月、
藤原道長・源倫子夫妻の春日詣に従う。
（「御堂関白記」）
（３）
長保元年（９９９年）１０月、
藤原道長の長女である
彰子入内屏風和歌を詠進
（「小右記」）
【藤原行成とは親友の間柄】
長徳元年（９９５年）、
参議に昇進するに際し、
後任の蔵人頭の人選について
一条天皇の諮問を受け、
藤原行成を推挙します。
父祖に早世され沈淪した
青年期を過ごした藤原行成は、
この源俊賢の進言あってこそ、
一条天皇によって一挙に地下から
万人垂涎の重職である
蔵人頭に抜擢され、
以後順調な官途を歩んだのでした。
藤原行成は源俊賢より
１３歳年下でしたが、
二人は後々まで相許した親友で、
源俊賢は藤原行成の子である
藤原良経の加冠役を勤め、
嫡子である源顕基の後室に
藤原行成の娘を迎えたとされています。
【２０年以上宮大夫に在職】
議政官の傍らで、
勘解由長官・修理大夫・右近衛中将・
治部卿を兼帯しながら、
長徳３年（９９７年）従四位上、
長保２年（１０００年）正四位下、
長保３年（１００１年）従三位、
長保５年（１００３年）には
上位３名（藤原懐平・菅原輔正・藤原忠輔）
を越えて正三位と順調に昇進しました。
この間、長保４年（１００２年）より
中宮・彰子の中宮権大夫（のち大夫）を務め、
彰子が皇太后・太皇太后へと
進むに従い転任し、
２０余年の間に亘って宮大夫に在職したのでした。
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【正二位】
その後、寛弘元年（１００４年）、
藤原有国を越えて権中納言、
寛弘５年（１００８年）、
藤原時光を越えて従二位に叙任され、
寛弘７年（１０１０年）には
上位３名（藤原公任・藤原隆家・藤原行成）
を越えて極位である正二位に至りました。
【後一条期に権大納言】
三条朝では昇進がなく
長和２年（１０１３年）には
藤原道長の長男である
藤原頼通に権大納言昇進で
先を越されてしまいますが、
後一条朝初頭の寛仁元年（１０１７年）、
源俊賢も権大納言に昇進しています。
寛仁年間の初めに三度辞表を奉り、
寛仁３年（１０１９年）、
致仕を許されて権大納言を辞任maしして、
治部卿（のち民部卿）と
太皇太后宮大夫を務めた。
【最期】
万寿３年（１０２６年）１０月２０日、
退官することを許されます。
万寿４年（１０２７年）６月１２日、
病が重くなって出家します。
最終官位は民部卿正二位。
翌１３日に薨去しました。
享年は父の源高明と同じ６９歳でした。
【処世術】
父親である源高明が政変で
失脚させられながらも、
時の執政（藤原兼家・道隆・道長）と
親密な関係を築き、
藤原氏全盛期に
源氏出身ながら
権大納言まで昇進しました。
源俊賢の処世術は明白単純とのこと。
それは明敏な学識を持って、
常に最高権力者に
密着することであったそうです。
時勢の推移を敏感に観察し、
事と次第によっては
昨日の恩人を追い落とすことに
躊躇しなかったとか。
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子孫は醍醐源氏の嫡流として、
子・隆国、孫・俊明の
三代に渡って大納言を輩出しました。
２０２４年ＮＨＫ大河ドラマ
「光る君へ」では
本田大輔（ほんだ だいすけ）さんが
演じられます。
円融天皇～政治に関与し兼家と疎隔・対立するも、藤原詮子との間に後の一条天皇が誕生します。
花山天皇～藤原氏の策略で１９歳で出家、独創的な発想の持ち主で好色、観音巡礼が後に「西国三十三所巡礼」として継承。
一条天皇～「叡哲欽明」と評された賢王は笛の名手で皇后との「純愛」を育み、やがて平安王朝文化が開花。
源明子（源高明の娘）～藤原道長の妾妻で源俊賢の異母妹、明子の家系はやがて五摂家に繋がっていくのです。
藤原行成～世尊寺流の祖、実務に高い能力を発揮し人徳高く当代の能書家として後世「権蹟」と称されました。
藤原兼家～熾烈な権力闘争に勝ち、のちの藤原氏最盛期を築いた人物です。
藤原道長～初めは目立たずも後に政権を掌握、「一家立三后」をなし「この世をば わが世とぞ思ふ」と詠む。
藤原彰子～真面目で努力家で控えめな少女は成長して国母となり政治力を発揮し「賢后」となりました。
藤原頼通～藤原氏の栄華の象徴である平等院鳳凰堂を造営、摂関政治から院政と武士が台頭する時代へ。
藤原教通～同母兄の頼通への卑屈なまでの従順と確執、やがて藤原摂関家の衰退を招いていきます。
藤原公任～藤原北家小野宮流で政治的・芸術手的にも名門の出で「お坊ちゃま」、藤原道長とは同い年で四納言。
藤原斉信～藤原道長の従兄弟で当初は道隆に仕えるも後に道長の腹心へ、清少納言との交流があり「枕草子」に登場します。
藤原道隆～藤原道長の長兄、容姿端正、明朗で豪快、気配り上手な優れた跡継ぎでしたが病で急逝します。
藤原伊周～藤原道隆の嫡男、急速に出世するも叔父・道長との政争に敗れ失意のうち世を去る。
藤原隆家～藤原道隆の四男、「刀伊の入寇」で武勇を挙げ政敵・道長も一目置いた気骨ある人物です。
紫式部～世界最古の長編小説とされる「源氏物語」を執筆した女流小説家で平安時代きっての才女。
和泉式部～和歌の才能にあふれた恋多き自由奔放な女性、娘への哀傷歌が有名です。
赤染衛門～理知的で優美な諷詠の女流歌人、おしどり夫婦であり良き妻良き母、「栄花物語」正編の作者とも。
伊勢大輔～「小倉百人一首」にもある「いにしへの」の歌が有名な平安時代の女流歌人です。
大弐三位（紫式部娘・藤原賢子）～母からは和歌や文才を、父からは明朗で自由快活な気性を受け継ぎ、行動力溢れ長寿を全うしました。
藤原為時～漢詩の才能に長け、人格形成で紫式部に影響を与えたとされており、子らに先立たれる。
藤原惟規～紫式部の兄弟で和歌の才能があったが、越後にて父より先に亡くなる。
藤原頼忠～従兄弟の兼通とは親しく兼家とはライバル、天皇の外戚になれず失意のうちに世を去る。
藤原実資～藤原北家嫡流の小野宮流の家領を継ぎ「賢人右府」と呼ばれ、貴重な資料である「小右記」を残す。
藤原道兼～父は藤原兼家、兄は藤原道隆、弟は藤原道長、待望の関白に就くも数日でこの世を去る。
源雅信～皇室の血筋で源倫子の父、藤原兼家にとっては邪魔な存在、宇多源氏の始祖で子孫は近江源氏・出雲源氏へと繋がっていく。
源倫子～６人の子供に恵まれ、夫である藤原道長の外戚政権を 実質的に完成させた女性です。
藤原詮子～藤原道長の姉、国母となりやがて日本最初の女院となって、権力を握り政治に介入する。
高階貴子～身分は高くないが和歌と漢詩に秀でた才媛で藤原道隆の嫡妻、百人一首５４番の情熱的な和歌が有名。
清少納言～末娘で父親からとても可愛がられて育ち、定子に仕え世界最古の随筆である「枕草子」を執筆します。
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